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海上の日の出(原作:巴金 海上的日出)

 日の出を見るために、私はよく早起きをする。その日は、まだ夜が明けていなかった。あたりはとても静かだった。船の上のエンジンの音が聞こえるだけだった。

 空は一面水色で、とても薄い色をしていた。しかし、瞬く間に一筋の朝焼けが空に現れ、ゆっくりとその範囲を広げていき、光を強めていった。私は、もうすぐ太陽が見えるにちがいないと思い、瞬きもせず、その辺りを眺めていた。

 しばらくして、思ったとおり、私の見ている辺りに、太陽の小さな一辺が顔を出した。赤いことは実に赤いのだが、まだ明るくない。太陽はまるで重い荷物を背負っているように、一歩一歩ゆっくりと上ろうとしている。最後には、ようやく雲と霞を突き破り、完全に海面に飛び出した。色は赤くてとてもかわいい。一瞬の間に、この深紅の円いものが、ふと目を奪う輝きを放ち出し、痛いほどに人の目を射て、その周りの雲も急に光彩を放つのだ。

 時に、太陽は重なった雲の中を移動し、雲の中から光線が差し下ろして来て、水面の上に届く。この時、どこが海でどこが空なのか見分けることは、容易ではなかった。なぜなら、私に見えるのはきらきらと輝く光しか見えなかったからだ。

 ある時、空に黒い雲があり、それが分厚いため、太陽が昇ってきても、人には見えない。しかし、太陽は黒い雲の中から光芒を放ち、黒い雲の厚い層を透して暗雲に代わって一筋の黄金色の光をちりばめる。それから後は太陽がゆっくりとその幾重にも重なった囲みを突き抜けて、空に姿を現し、黒い雲でさえも紫色或いは紅色に染める。この時、光っているのは、太陽ばかりでなく、雲と海水であり、同時に私までもが光り輝くのだ。

 これこそ実に偉大ですばらしい眺めではないか。
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テーマ:エッセイ - ジャンル:小説・文学

匆匆 (原作:朱自清)

匆匆(そうそう) 原題:匆匆 原作者:朱自清

 燕は去っても、また来る時がある。柳は枯れても、また青々とする時がある。桃の花は散っても、また咲く時がある。しかし、聡明なあなたよ、教えて欲しい。私たちの過ぎ去った日々はどうして一度去ったら、戻って来ないのだろうか。誰かが盗んだのか?いったい、誰が盗んで、どこに隠したのか?あるいは、自ら逃げていったのか?それで、どこへ逃げて行ったのか?

 彼らが私にどれだけの日々をくれたか、私は知らない。しかし、私の手がだんだんと空虚になっているのは確かだ。jひそかに計算してみたら、八千数日がすでに私の手の中からすり抜けていったことになる。針の先の一滴の水が大海に滴り落ちるように、私の日々は時間の流れの中に音もたてず、姿も見せずに、滴り落ちていったのだ。私はそれを考えると、だらだらと流れる汗を、さめざめと流す涙を禁じえない。

 去るものは去ってしまい、来るものは次々と来る、この去来する間は、どんなに忙しいことか。朝、私が起きると、私の小さな家には、太陽があちこちから、斜めに差し込んでくる。太陽には足があるんだね、軽々と、そして、ひっそりと移動する。私もぼんやりとして、いっしょに動き回る。私が手を洗っている時、日は盥の中から逃げていき、ご飯を食べている時、日は茶碗の中から逃げていく。黙っているとき、日は見つめる二つの眼の前から逃げていく。彼の去るのがあわただしく感じられたので、手を伸ばして、遮ろうとすると、また遮る手から逃れていく。空が暗くなり、私がベッドに横になっていたら、すばやく私の体の上を跳び越えて、私の足もとから飛び去っていく。私が目を覚まして、再び太陽に出会って、一日が過ぎていく。私はため息をついた。しかし、新しい日の影は、ため息の中を、きらりと光って通り過ぎる。

 飛び去るように過ぎ去る日々の中で、大勢の人がいる世界の中で、私に何ができるだろうか。ただ徘徊するだけしかないのではないか、ただあわただしさがあるだけではないか。八千数日のばたばたとした中で、徘徊したこと以外に、何が残っているのか。過ぎ去った日々は煙のごとく、微風に吹かれて散ってしまった。薄い霧のごとく、朝日に照らされて蒸発してしまった。私はどんな痕跡を残したのか。私はどうして陽炎のような痕跡を残したのだろうか。私は裸でこの世界にやってきて、あっという間にまた裸になって戻っていくのだろうか。しかし、安穏としていられない。どうして、一度きりの人生をわざわざ無駄にすることができるだろうか。

 あなたは賢い、私に教えてくれ、私たちの日々はどうして一度去って二度と戻らないのか?


出典:1922年3月28日(発表1922年4月11日)

朱自清(1898年11月22日—1948年8月12日)光緒年間,本名自華,号秋実,字字佩弦。原題著名作家、学者。本籍膏浙江省紹興,江蘇海州(今の連雲港市),後祖父に従って、父のいる揚州に住む。

月明かりの池 訳:誠生 原作:朱自清

 この何日か、なかなか心が落ち着かない。今宵、庭に座って夕涼みをしていると、ふと、毎日通り過ぎている蓮池のことが思い出された。この満月の光の下では、きっと違う様子を見せてくれるだろう。月がだんだん高く上ってきた。壁越しに聞こえていた子供たちの笑い声はすでに聞こえない。妻は、子供の潤ちゃんを寝かしつけるため、背中を軽くたたいきながら、うつらうつらしている様子で子守唄を口ずさんでいる。私はそっと羽織をはおり、ドアを閉めて外へ出た。
 
 蓮池に沿って、歩いていくと、折れ曲がっていて、石炭ガラで舗装した一筋の道がある。ひっそりとしてひなびた道だ。昼間でさえ、人通りが少ないのだから、ましてや、夜はなおさら寂しく感じられる。蓮池の周りには数多くの木々が生い茂っていて、道の傍らには柳や名も知らない木々がある。月のない夜には少し怖いような感じがするが、今夜は淡い月明かりではあるけれど、それがかえって、いい雰囲気をかもし出している。
 
 この道にいるのは私ひとりだった。私は手を後に組んで、そぞろ歩きをしていると、まるでこの空間は私だけのものになったような気がする。私は賑やかなのも、静かなのも好きだ。また大勢の人といっしょにいるのも、一人でいるのも好きだ。今夜のように、月明かりの下、一人広々とした空間にいて、何を考えてもいいし、何も考えなくてもいいというこの境地は、本当に自由な人間になった気分だ。昼間にやらなければならないことも、話さなければならないことも、すべて気にしないでいられる。今は、ただ、目の前に広がる蓮の香りときれいな月を楽しんでいれば、それでいい。
 
 曲がりくねった蓮池の上には、見渡す限り蓮の葉が生い茂り、葉っぱは池から高く上に伸びている。まるで、しとやかな踊り子がスカートを広げているように見える。幾重にも折り重なった葉っぱの間からは、小さな白い花が点々と見えて、しなやかに咲いているのもあれば、恥ずかしげになかなか咲きそうにないつぼみのようなものもある。まるでちりばめられた真珠のようにも見え、湯上りの美人のようにも見える。すがすがしい香りが絶え間なく、そよ風といっしょに運ばれてきて、まるで、遠いところにある高殿の上からかすかに歌声が聞こえてくるようだ。この時、花も葉も小刻みに震え、まるで稲妻のように一瞬のうちに、向こう側のほうへ移動する。もともと葉と葉が肩を並べるようにくっついていたので、濃い青色の波が波紋を広げるように感じられた。葉っぱの下には、水が静かに流れているが、葉っぱにさえぎられていて、見ることができない。といっても、それだからこそ、蓮の葉に趣があるのだと思う。
 
 月明かりは流れる水のようだ。静かに花と葉っぱの一枚一枚に淀みなく注がれる。薄い青霧が蓮池の中から浮かび上がって来る。葉っぱと花は、まるで牛乳で洗われたかのようでもあり、細い綿糸の夢に包まれているようでもある。満月とはいえ、空には一層の薄い雲がかかっているので、明るい光が差してこない。しかし、私はこれこそがちょうどいいのだと思う。熟睡はもとより欠かせないことだが、少し居眠りするのも別の味わいがあるというのと同じだ。月明かりは木々の透き間から差し込んでくるため、高い位置で群がり生える灌木が、それぞれに、まだら模様の黒い影を落としていて、くっきりと浮き出て見える幽霊か何かのようだ。曲がった柳の木のまばらな影は、あたかも蓮の葉の上に描かれた美しい少女のようだ。池の中に差している月明かりは斑(むら)があって、それでいて、光と影の調和が取れていて、そのメロディーはまるでバイオリンによって奏でられる名曲のようだ。
 
 蓮池の周りは、遠くも近くも、高いところも低いところも、すべて木が生い茂っているが、その中でも、柳の木が最も多い。これらの木がまさに蓮池を幾重にも取り囲んでいるのだ。ただ、この小道のある傍らだけは、木がなくて透き間ができている。まるで月の光のために特別に取っておいたようだ。木々の色はすべて一様に暗くて、ぱっと見たところ、まるで霧の一塊のようだが、柳の木の容姿は霧の中でも見分けることができる。こずえの上には、ぼんやりとした山々が見える。といっても、山の輪郭がだいたい見えるだけのことだ。木々の透き間から漏れてくる街頭の灯りは打ちしおれて元気がない。疲れて眠たい人のような目だ。この時、最もにぎやかなのは、やはり木々の上で鳴くセミの声と水の中の蛙の声。しかし、その賑やかさは彼らのものであって、私には何にも感じられない。(了)


 

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