幼い頃 訳:誠生 原題:童年 作詞:庄奴曲:周高俊

 池のそばのガジュマルで、蝉の声が夏を呼んでる
 草むらの上のブランコに、蝶々だけがとまってる
 黒板では、先生のチョークがコツコツギーギー懸命に音を立ててる
 休み時間を、放課後を待って、遊びに行った幼いころ
 
 学校の傍の店には何でもあるけど、ポケットには一円もない
 諸葛四郎と魔鬼党、あの宝剣を奪い取ったのは誰?
 隣のクラスのあの子が、まだ窓辺を通らないのは何故?
 口にはおやつ、手には漫画、心には初恋の幼いころ
 
 いつも寝る前に宿題やってないのに気付いた
 いつもテスト終わってから勉強しなかったのに気付いた
 時は金なり、時は金で買えないと先生が言ってた
 一日また一日、一年また一年ぼんやりすごした幼いころ
 
 誰も知らない、なぜ太陽は山の向こうに沈んでくの?
 誰も教えてくれない、山奥には仙人が住んでるの?
 長い間、ボウッと空を見つめながら
 なんでも好奇心から妄想してた、さびしい幼いころ
 
 陽だまりの下、稲穂の上を蜻蛉が飛んでるよ
 クレヨンも万華鏡も空にかかるあの虹は描ききれないよ
 いつ先輩たちのような大人になるの?
 休みを待って、明日を信じて、大人になりたいと思った幼いころ
 
 一日また一日、一年また一年、大人になりたいと思った幼いころ
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テーマ: - ジャンル:小説・文学

小さな出来事 訳:xufang 原作:魯迅

 私が田舎から北京へ出て来て、瞬く間に六年が過ぎた。その間いわゆる国家の大事も見聞きしたが、それらは数えてみれば、少なくない。それなのに、私の心の中には、どれも痕跡を残していない。もし、私がこれらの大事から影響を探し出すとしたら、それは私の癇癪をいっそうひどくさせたというだけだ。もっと素直に言えば、日増しに人を馬鹿にするようになっただけというのが正直なところだ。ところが、ひとつの小さな事件があって、それこそが、反対に有意義であり、私を癇癪から引き離してくれた。そして、今に至るまで、私はその小さな事件を忘れることができない。

 それは民国六年の冬の日のこと、北風が実にひどく吹き荒れていた。わたしは生計ために、どうしても朝早く出ていかなければならなかった。路上では、ほとんど人を見かけなかった。ようやく一台の人力車をつかまえて、「S門まで」と伝えた。ほどなく、北風は弱くなった。路上の埃はすっかり掃き清められて、道はきれいになっていた。もう少しでS門に着くという時、突然、人力車の梶棒に誰かが引っかかって、ゆっくりと倒れた。

 倒れたのは一人の老女だった。白髪まじりの、ぼろぼろの服を着た老女だった。そいつは歩道から突然車の前を横切ろうとしてきたのだった。車夫がすでに道を空けて避けた後だったが、そいつは破れた袖のない服のホックを止めていなかったので、微風にあおられて、服が開き、それが梶棒にかぶさってしまったのだった。幸い車夫がすばやく車を止めたので、よかったが、さもなければ、女は仰向けにひっくり返って血を流していたところだった。

 女は地面に伏せたままで、車夫もそのまま突っ立っていた。わたしは、老女が怪我をして要るとは思えなかったし、また誰も見ていなかったのだから、「さっさと行ってしまえばいいのに!」と思ったが、車夫は突っ立ってどうしようかと考えている様子だ。この車夫はよけいなことをして、自分から災難を引き寄せる奴だと思った。それに、私にとっても大迷惑だ。

 そこで私は車夫に言った。

 「大したことないよ。行ってくれ!」

 車夫は私の言ったことが理解できなかったのか、あるいは、聞こえなかったのか、何と、梶棒を置いて、老女をゆっくりと助け起こし、腕を支えて、立ち上がらせ、彼女に言った。

 「どうしたね?」

 「怪我をしたんだ」

 私は思った。

 「お前がゆっくりと倒れるのを私はこの目で見たぞ!怪我などするものか、わざとらしくしているだけだ。本当に憎い奴だ。車夫もよけいなことをするものだ!これも自業自得だ。勝手にするがいい。」

 車夫は老婆の話を聞いて、少しも躊躇せず、老婆の体を支えたまま、そのまま一歩一歩歩いていった。私は不思議に思って、前方を見ると、そこにあるのは交番だった。大風の後で、外には誰も立っていなかった。車夫は老婆を助けながら、交番の入り口に向かっていたのだった。

 この時、私は突然ある種の異様な感覚に襲われた。彼の誇りだらけの後姿が急に大きく見えて、そして、彼が遠ざかれば遠ざかるほど大きくなって、仰ぎ見なければならないくらいになった。しかも彼は私をほとんど威圧するようになって、私の皮衣の下の隠している「小さな自分」を、今にも絞り出しそうに思われた。

 この時私の活力は凍りついたようになって、身動きができなかった。何も考えられなかった。駐在所から一人の巡査が出てきた時、やっとで、私は車から下りることができた。

 巡査は私に近づいてきて言った。

 「他の車を雇ってください。彼はもう車を引けません。」

 私は、ふとコートの内ポケットから、銅貨を取り出し、巡査に手渡して言った。

 「これを彼に!」

 風は止んでいた。道はまだずいぶんと静かだった。私は歩きながら、考えた。ただ、自分のことを考えるのが恐ろしかった。以前のことはともかく、あの銅貨を渡したのはどういう意味があったのだろうか?褒美?私に車夫を裁くことができるのだろうか?答えられなかった。

 この出来事は、これまでも時々思い出す。そのたびに私は苦痛に耐えなければならなかった。自分のことに考えが至ると、努力しなければならなかった。数年来蓄えた文武両道も、幼いころ読んだ『子曰く』や『詩に云う』のようなものも思い出せなかった。ただ、この小さな出来事だけが私の心にあって、いつも、私の目の前に浮かび上がってくる。時には以前にも増して、はっきりと思い出され、私にいっそう恥ずかしい思いをさせる。そして、私を生まれ変わるように促し、同時に、勇気と希望を与えてくれるのだ。

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月明かりの池 訳:誠生 原作:朱自清

 この何日か、なかなか心が落ち着かない。今宵、庭に座って夕涼みをしていると、ふと、毎日通り過ぎている蓮池のことが思い出された。この満月の光の下では、きっと違う様子を見せてくれるだろう。月がだんだん高く上ってきた。壁越しに聞こえていた子供たちの笑い声はすでに聞こえない。妻は、子供の潤ちゃんを寝かしつけるため、背中を軽くたたいきながら、うつらうつらしている様子で子守唄を口ずさんでいる。私はそっと羽織をはおり、ドアを閉めて外へ出た。
 
 蓮池に沿って、歩いていくと、折れ曲がっていて、石炭ガラで舗装した一筋の道がある。ひっそりとしてひなびた道だ。昼間でさえ、人通りが少ないのだから、ましてや、夜はなおさら寂しく感じられる。蓮池の周りには数多くの木々が生い茂っていて、道の傍らには柳や名も知らない木々がある。月のない夜には少し怖いような感じがするが、今夜は淡い月明かりではあるけれど、それがかえって、いい雰囲気をかもし出している。
 
 この道にいるのは私ひとりだった。私は手を後に組んで、そぞろ歩きをしていると、まるでこの空間は私だけのものになったような気がする。私は賑やかなのも、静かなのも好きだ。また大勢の人といっしょにいるのも、一人でいるのも好きだ。今夜のように、月明かりの下、一人広々とした空間にいて、何を考えてもいいし、何も考えなくてもいいというこの境地は、本当に自由な人間になった気分だ。昼間にやらなければならないことも、話さなければならないことも、すべて気にしないでいられる。今は、ただ、目の前に広がる蓮の香りときれいな月を楽しんでいれば、それでいい。
 
 曲がりくねった蓮池の上には、見渡す限り蓮の葉が生い茂り、葉っぱは池から高く上に伸びている。まるで、しとやかな踊り子がスカートを広げているように見える。幾重にも折り重なった葉っぱの間からは、小さな白い花が点々と見えて、しなやかに咲いているのもあれば、恥ずかしげになかなか咲きそうにないつぼみのようなものもある。まるでちりばめられた真珠のようにも見え、湯上りの美人のようにも見える。すがすがしい香りが絶え間なく、そよ風といっしょに運ばれてきて、まるで、遠いところにある高殿の上からかすかに歌声が聞こえてくるようだ。この時、花も葉も小刻みに震え、まるで稲妻のように一瞬のうちに、向こう側のほうへ移動する。もともと葉と葉が肩を並べるようにくっついていたので、濃い青色の波が波紋を広げるように感じられた。葉っぱの下には、水が静かに流れているが、葉っぱにさえぎられていて、見ることができない。といっても、それだからこそ、蓮の葉に趣があるのだと思う。
 
 月明かりは流れる水のようだ。静かに花と葉っぱの一枚一枚に淀みなく注がれる。薄い青霧が蓮池の中から浮かび上がって来る。葉っぱと花は、まるで牛乳で洗われたかのようでもあり、細い綿糸の夢に包まれているようでもある。満月とはいえ、空には一層の薄い雲がかかっているので、明るい光が差してこない。しかし、私はこれこそがちょうどいいのだと思う。熟睡はもとより欠かせないことだが、少し居眠りするのも別の味わいがあるというのと同じだ。月明かりは木々の透き間から差し込んでくるため、高い位置で群がり生える灌木が、それぞれに、まだら模様の黒い影を落としていて、くっきりと浮き出て見える幽霊か何かのようだ。曲がった柳の木のまばらな影は、あたかも蓮の葉の上に描かれた美しい少女のようだ。池の中に差している月明かりは斑(むら)があって、それでいて、光と影の調和が取れていて、そのメロディーはまるでバイオリンによって奏でられる名曲のようだ。
 
 蓮池の周りは、遠くも近くも、高いところも低いところも、すべて木が生い茂っているが、その中でも、柳の木が最も多い。これらの木がまさに蓮池を幾重にも取り囲んでいるのだ。ただ、この小道のある傍らだけは、木がなくて透き間ができている。まるで月の光のために特別に取っておいたようだ。木々の色はすべて一様に暗くて、ぱっと見たところ、まるで霧の一塊のようだが、柳の木の容姿は霧の中でも見分けることができる。こずえの上には、ぼんやりとした山々が見える。といっても、山の輪郭がだいたい見えるだけのことだ。木々の透き間から漏れてくる街頭の灯りは打ちしおれて元気がない。疲れて眠たい人のような目だ。この時、最もにぎやかなのは、やはり木々の上で鳴くセミの声と水の中の蛙の声。しかし、その賑やかさは彼らのものであって、私には何にも感じられない。(了)


 

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