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戸惑い

翻訳「戸惑い」 原作:呉岡「惑」


 「王婆さん、願い通り、初めてのお孫さんが女の子でよかったですね。」

 「王姉さん、おめでとうございます」

 王婆さんの長男の嫁に女の子が生まれたのを知って、隣近所の人が皆お祝いを言いに来た。王婆さんは満面に笑みを浮かべて「どうもありがとうございます」と繰り返しお礼を言った。

 他の人は家を継がせるために男の孫が生まれることを望んでいるが、彼女は違っていた。彼女には三人の息子がいる。ただ、娘がいないことをいちばん残念に思っていたのだ。他の家へ行って、その家の娘さんやお母さんと親しくするたびに、複雑な気持ちになった。ああ、一生、娘ができる見込みはないなと。彼女は、気持ちを切り替えて、三人の嫁が女の子を産むことを望み、そのことを嫁たちに言ったことがある。そして、とうとう天が望みを叶えてくれたのだ。初めて生まれた孫が、望みどおり女の子だったのだから、彼女が喜ばないはずはなかった。小さな孫娘の丸々と太った小さくて可愛い顔を見ながら、王婆さんは蜜を食べているような心持ちになった。ミルクをやったり、水をやったり、おむつを換えたり、孫に嫌な思いをさせないようにと、それだに気を配った。家の人も皆、この「小さなお姫様」の到来を喜んでいた。

 瞬く間に一年が過ぎて、二番目の息子の嫁が妊娠し、子供を産んだ。またしても女の子だった。王婆さんは、「私には二人の孫娘ができたんだ」と声に出して喜んだ。しかし、二番目の嫁は夫に向かって「名家の王家が絶えてしまうかもしれない、でも、やっぱりうれしいわ」としきりに言った。中国では一人っ子政策のため、同一夫婦の間で、二人目の子を持つのは難しい。家を絶やさないためには、残った三番目の嫁に期待するほかなかった。

 王婆さんは、その後の、二日間家を出ようとしなかった。隣近所の人たちがお祝いを言いに来ることしたら、留守にできなかったからだ。しかし、何日か過ぎても、門をくぐる者は誰もいなかった。王婆さんが出かけて、顔を合わせると、人々はやっとのことで口を開いて、「王おばあさん、お子さんもみなさんもお元気ですか?」と言う。「お嫁さん、お子さん、みなさん、平安で何よりです。」そう言ってから、あわただしく離れて行く。王婆さんは心の中で不思議に思い、こうしたことを、二番目の息子に話したら、息子は、しばらく黙りこんでからこう言った。「みんな忙しいんだよ。誰か暇があったら、お母さんとおしゃべりもできるだろうからね。」
 
 そして、さらに二年が過ぎた。三番目の嫁が妊娠し、子供を産んだ。今度もやはり女の子だった。王婆さんは、願いがどこまでも叶うので、うれしくてたまらなかった。彼女は、この喜びをすぐにでも隣近所やおばあさんたちに知らせたかったが、残念なことに、人々は彼女をかなり遠いところから見つけると、すぐ逃げるように家の中に入ってしまうのだ。逃げおおせない時は、不自然な笑顔を浮かべて、「おばあさん、あのう、お元気ですか。時間があったら、また話しましょう、わたしは急いで子供を迎えに行かなきゃならないんで」という。

 「おばあさん、心をゆったりして…さあ、ただちょっとおしゃべりしただけだよ。おじいさんが早く酒を飲みたがっているのよ。私は行くわ。」

 これまで、一つ家のように親しくして、隠し事もしなかった隣近所の人たちがまるで知らない人のようになった。王婆さんはこの何日かずっと一人で椅子に座って、ボウッとしている。彼女はこの不可解なことに苦慮していた。「いったい何が起こったのだろうか」と。
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テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

義犬

 昔、中国山東省の周という村に一人の商人がいた。安徽省の蕪湖まで商いに出かけ、そこで、ずいぶんお金を儲けた。ある日、彼は、船を一隻借りて家へ帰ることにした。船に乗って川を下っていく途中、土手のほうをふと見ると、一人の男が犬を縛り付けて殺そうとしているのが目に入った。商人は船頭に命じて、船を岸に着けさせ、犬を殺そうとした男に事情を聞いた。男は生肉を売る肉屋であった。商人は肉屋から売値の二倍の金で犬を買い取り、船に戻った。 
 
 ところが、思いもよらないことに、彼が借りた船の船頭は強盗だった。船頭は商人が金持ちだとわかると、船をアシやヨシの生い茂ったところに乗り入れ、商人を刺し殺そうとしたのだった。しかし、商人が体に傷をつけないでほしいと哀願したので、強盗は仕方なく、商人の体を毛布にくるんで、川に投げ捨てた。犬はそれを見るとすぐに水の中に飛び込み、毛布を口にくわえて、商人といっしょにばたばたともがきながら、何里も流されて、何とか浅瀬に流れ着いて止まることができた。
 
 犬は岸に上がると、人のいる所まで走って行き、吠え続けた。ある人がおかしいと思って、犬の後ろについて行き、川の浅瀬で、毛布に包まれたものを見つけた。その人は毛布を岸に引き上げ、縛ってあった縄を切った。
 
 商人はまだ死んではいなかった。彼は助けてくれた人に事情を一部始終話し、さらに、別の船で蕪湖まで乗せて行ってもらった。蕪湖で、強盗の船が戻ってくるのを待とうというのだっった。蕪湖で船を降りた時、犬はどこかへ行ってしまった。ひどく寂しい気持ちになったが、ともかく、強盗の船を探し始めたが、商船はまるで森の木のようにたくさんあって、何日間か探したが、見つけることはできなかった。
 
 ある日、商人はあきらめて、同郷の知人といっしょに山東省の家へ帰ることにした。船に乗ってさあ、出発しようとした時、例の犬が突然、走ってやってきて、激しく吠えた。商人がこっちへ来いと呼んだが、犬は逆の方向に走り出してしまった。商人が船を下りて、犬の後ろに付いていったら、犬は一隻の船に飛び乗り、ある男の足に噛み付いていた。男がどんなに殴っても、犬は離さなかった。商人は、犬を叱りつけたが、犬が噛み付いている男を見ると、それはまさにあの強盗だった。強盗は衣服と船をすべて別のものに換えていたので、なかなか見つけられなかったのだ。商人は強盗を縛りつけ、船の中を探して見ると、盗まれた金は盗まれた時のままあった。
 
 何と、犬は恩を知り、それに報いようとしたのだ。世の中の恩知らずで良心のない者たちは、この義犬を見れば、きっと恥ずかしく思うはずだろう。
 
 原作:聊斎志異「義犬」

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