思いやり

 ある貧しい女子学生、北京に来て大学に通うようになってまだ十日しかたっていないのに、彼女の両親がともに事故で亡くなり、彼女はまったく身寄りがいなかったので、一銭もなくなった。それで、19歳の彼女は涙を流しながら退学届を提出した。故郷に帰って農作業をするつもりでいた。

 この時、ある教授が彼女のために大学の学報編集部での仕事を紹介した。学報編集部で校正担当に一人欠員が出たといって、紹介したのだ。学報は十日に一回出されるもので、彼女はいつもやることがなかったが、給料はもらうことができた。

 彼女はこうして四年間の大学生活を過ごしたが、彼女はとうとう本当のことを知らなかった。実は毎月の給料は5人の編集部員が自分の給料の中から少しずつ負担して集めたものだった。それに、本来、編集部には校正係など必要なかったのだ。彼女のために特別に用意したものだった。

 そうしたことを彼女は全く知らないまま卒業していった。5人の編集部員は心の中に急にぽっかりと穴が空いたような気がした。彼らにとって給料日に給料の一部を集めるのが習慣になってしまっていた。思いやりの心を示すのもまた人生における一つの成果であり楽しみである。彼らはまた学費が足りず退学せざるを得ない山村出身の学生を一人雇用した。

                                          《斎霞著「耳が喜ぶ中国語」》
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