火中取栗

 昔、一匹の猿がおなかをすかして、食べ物を探していた。その時、ちょうど人が栗を炒っている野を見つけた。栗は間もなく炒りあがるところだった。皮がはじけ、黄色い色の栗の肉が見えていて、いい香りが鼻を突いた。猿はよだれを垂らしながら、やはり栗が熱くて、やけどしそうだと思うと、手を出せなかった。
 ちょうど手をこまねいていたところ、一匹の子猫が庭で遊んでいるのを見つけた。そこで、サルは子猫に近づき、子猫を構って言った。
「へい!見てみろ、鍋の中の大きくてまん丸な栗だよ。お前、あれが取れるか?」
 負けず嫌いの子猫は自信たっぷりに言った。
「大したことないさ。見てろよ!」
 そう言うと、栗の持ち主が油断している間に、前足を鍋の中につっこみ、栗を一つ取り出した。あまりの熱さに子猫はみゃあみゃあと泣き出したが、我慢して、また一つ、また一つと取り出して地面に投げ捨てた。
 何もせずじっと見ていたサルは、その様子を見て、悠然と地面に落ちた栗を拾って、うまそうに食べたのだった。《中国故事「火中取栗」》

※本来は、ラ・フォンテーヌの寓話。中国では「火中取栗」という。日本では「火中の栗を拾う」という。

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大芝居

 バスを待っている間、椅子に座って足を投げ出し、スマホをいじっていたら、突然、女の子が僕の足に引っかかって倒れた。倒れた女の子は捻った足をさすりながら、僕を脅すように言った。
 「私を病院に連れて行ってくれなけりゃ、人を呼ぶわよ。」
 こんなことに慣れていなかったぼくは怖くなって、しかたなく、女の子をおんぶして、近くにひとつしかない診療所へ連れて行った。
 医者が言った。
 「そんなに重症じゃないけど、歩けるようになるまで、少なくとも二か月はかかるだろうね。それまで慎重にしないと、悪くすれば、一生歩けなくなるよ。」
 女の子は家の人にこのことを知られたくないと言って、僕を脅した。僕はしかたなく女の子のために部屋を借りて、しかも、身の周りの世話をすることになった。数日が過ぎて、僕たちの間に特別な感情がわいてきた。女の子は僕の彼女になった。
 二か月後、ほとんど回復した彼女を再検査のために同じ診療所へ連れて行った。あの時と同じ医者が彼女に聞いた。
 「うまくいったかい?」
 彼女は医者とハイタッチして言った。
 「うん、うまくいったわ!おじいちゃん!」

                     《開心笑吧2016-04-15‟好大的一场戏”》

鹿を指して馬となす

 話は秦の始皇帝亡き後、二世皇帝の時のことだ。宦官の趙高が皇帝の地位を簒奪しようと野心を燃やしていた。だが、大臣の何人が自分を支持しているかわからない。そこで、ある作戦を思いついた。

 趙高は朝廷に参内する時、鹿を一頭連れてきて、あいそ笑いしながら、皇帝に言った。
「陛下に一頭のを献上いたします。どうぞお収めください!」
 皇帝はこれを聞いて、大笑いして立ち上がり、それから鹿を指さして言った。
「これがだって、明らかに鹿じゃないか!」

 趙高は慌てることなく言った。
「陛下、よくご覧ください。これは間違いなくでございます。信じられないとおっしゃるのなら、大臣たちにお尋ねください。」

 それを聞いた大臣たちはがやがやと騒ぎ始めたが、何人かの正直者たちの一人が言った。
「これがだなんてことはあり得ません。鹿以外の何物でもありません。」 
 しかし、肝の小さい大臣は趙高の恐ろしい視線を浴びて怖くなり、趙高に合わせて言った。
「これはよいでございます。」

 その後、趙高に「ではありません」と言った正直者たちはみな趙高によって殺害された。

耳を覆って鐘を盗む(中国語「掩耳盗鈴」)

 昔、一人の泥棒がお金持ちの家に盗みに入った。

 庭に大きくてきれいなが吊るされていたのを見た泥棒は大いに喜んで、このを盗んで行こうと考えた。

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受験地獄の受験旅行!

 ぼくが大学入試を受けた時は、センター試験などなかった。受ける大学まで行って、受験することになっていた。家には兄弟三人いて、私立大学は父に許してもらえなかった。とにかく国立を受けなければならなかった。少しでも合格の可能性がある大学を選んだものの、国立は5科目受験だ。ぼくの場合、国語・英語・社会だけなら私立でもけっこういいところに受かる自信があったのに、夏休み遊び過ぎたため、数学と理科は絶望的な状態だった。それでも、無理を承知で、とりあえず遠い地方の国立大学まで寝台列車で長距離移動して受験に行った時のことが今も忘れられない。

 個室が左右3段ずつのベッドで、最大6人寝られるようになっている寝台列車、その上段のベッドを取ったぼくは、夜10時過ぎ、少し勉強して、さあ、寝ようとしたが、なかなか寝られない。しばらくしたら、数人の男性が騒ぐ声が聞こえた。それにアルコールのにおいもする。カーテンを少し開けて覗き見ると、下段のベッドに4人ほどが座って、酒盛りをしていた。しばらく我慢したが、たえきれず、「すみません!明日大学入試なんです。静かにしてくれませんか?」と少し遠慮がちに言った。

 すぐに静かになったものの、それから30分ほどしたら、また声がし始めた。はじめは小声だったが、ぼくが何も言わないので寝てしまったのだと思ったのだろうか、また少しずつ大きな声になって、そのうち大笑いする声も聞こえてきた。アルコールのにおいもプンプンしてきた。ぼくは当時、数理同様、アルコールがまったくだめだった。今度は大きい声で「騒がないでください。お願いします!」と言ったら、ようやく静かになった。

 受験に行ったのは四国にある二つの大学だった。一つ目の大学がある街には有名な坊ちゃん温泉があるが、残念なのことに立ち寄る余裕などなかった。試験では国語・英語・社会は自信があったが、数学は白紙で出した。大学を出る時、「電報サービス」という案内を見て、意味のないお願いをした。受験番号を知らせておけば、発表の日、すぐに合格掲示板を見て知らせてくれるのだ、合格の場合「サクラサク」、不合格の場合「サクラチル」の電報をくれることになっていた。

 一つ目の大学受験が終わったら、すぐに、二つ目の大学を受けるために、電車で移動した。目的地は高知県。地元の旅館に泊まった。旅館に上がる時、中居さんが「御履き物はこちらへ忍ばせておきます」と言った。「『忍ばせる』というのはどういう意味ですか?」と尋ねると、「入れて置きます」ということだった。それから、はりまや橋にも行ってみた。確か、橋はすでになかったと思うが、何となく情緒を感じた。方言に触れたことや名所を通っただけで来た甲斐があったと思った。この大学でも数学がほとんどわからず、一問だけ自信のない答えを書いておいた。そして、ここでも意味のない電報サービスをお願いした。

 その後、帰郷し、後に、「サクラチル」という電報が二通届いたのは言うまでもない。何ともいい加減な受験生だったことを今は深く反省している。ぼくの寝台列車と旅館の体験は、ただの受験に名を借りた旅行に過ぎなかった。

 そして入りたいと思っていなかった第三志望の大学に合格した。そこは数学と理科の受験が不要だった。国立を落ちた人たちがたくさんいる大学だった。この大学に入ったことが人生を大きく左右した。どこの大学でも構わない、勉強することが大切だと人は言うけれど、強い意識を持って入学するのとそうでないのとでは、やはり大きな差があるだろう。

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